著者アーカイブ: yamdada_sharoshi

 経済産業省で働く性同一性障害の職員が、女性用トイレの使用制限を不服として訴えた裁判で、最高裁判所第三小法廷(今崎幸彦裁判長)は使用制限を違法と判断した。二審の東京高等裁判所は、経産省には他の職員が持つ性的な不安も考慮する必要があったとして、使用制限を適法としていた。 職員は生物学的な性別は男性で、性同一性障害の診断を受けている。経産省と人事院は、執務室のある階とその上下階の女性トイレの使用を認めず、2階以上離れた女性トイレの使用を認める決定をしていた。
 最高裁は、経産省が同僚らを対象に開いた説明会で、明確に異論を唱えた者はおらず、現に2階以上離れた階の女性トイレを使用していてトラブルになったことはないと指摘。使用を制限する理由はなく、裁量権の逸脱・濫用に当たるとした。
▼判決文はこちら
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/191/092191_hanrei.pdf

ポイント!

一審は違法、二審では適法とされたものを、最高裁は人事院の判定を裁量権の逸脱・濫用にあたるとし違法と評価しました。その根拠として女性トイレの使用に関しての人事院の判断を本人が被る不利益より同僚職員への配慮を過度に重視し公平性妥当性を欠いているとしています。
判決の補足意見にも述べられているように、今後は社会全体で議論され、コンセンサスが形成されることが必要であることは言うまでもありません。

 厚生労働省は、建設業について、「時間外労働の上限規制・わかりやすい解説」と「時間外労働の上限規制に関するQ&A」を公表した。建設業は、2024年4月1日から月45時間、年360時間、年6回まで月80時間未満、年720時間等の上限規制が適用されるが、「災害時の復旧・復興が見込まれる」場合に限り上限を超えて労働させることができるとされている。「わかりやすい解説」には、いわゆる36協定届の新様式とその記載例も掲載されている。改正労基法(2019年4月施行)による時間外労働の上限規制は、建設業のほか、自動車運転業務、医師等について適用が猶予されてきたが、2024年4月から、事業、業務のあり方等を踏まえた上限が設定される。
(わかりやすい解説)
https://www.mhlw.go.jp/content/001116624.pdf

ポイント!

「建設業の時間外労働の上限規制・わかりやすい解説」は2019年4月の時間外労働と年休5日がテーマの「わかりやすい解説」2つに続く読み易いパンフレットだなと感じました。ただ労基法33条1項と139条1項の関係と届出の違い(Q&Aの2)などは少し複雑で様式を取り違えやすい恐れがありますので、下記Q&Aも確認されることをお勧めします。
https://www.mhlw.go.jp/content/001115877.pdf

2023年4月末に、労働政策研究報告書No.226「労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析」を上梓した。本リサーチアイでは、今回の報告書に至るこの分野の先行研究の推移を概観した上で、前回の平成調査との比較に重点を置いて、今回の令和調査の結果を図解していく。

https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/078_230531.html?mm=1872

ポイント!

上記調査では裁判所における解雇の金銭解決の解決金額(実態)などを平成と令和に分けて、一部の期間、限られた事案との断りはあるもののかなり具体的な金額分布や中央値が示されています。
今回の新しい調査(令和調査)に労働局のあっせんの結果が入っていないのは残念ですが、労働相談業務に携わる者としては分かり易くて詳しい最新情報を得ることができて大変有難いです。

大学で労働法の講義を長く担当していると、社会保険労務士になる受講者がでてくる。今年2月に、私の労働法ゼミで社労士になった教え子3人と会食した折りには、新型コロナの感染拡大期は、雇用調整助成金の申請書作成で大忙しだったという話で盛り上がった。労働行政に提出する書類の作成は社労士にとって重要な仕事であることは理解している。だが、今後もそうあり続けるのか。最近は弁護士と雑談すると、…

https://www.rodo.co.jp/series/151211/

ポイント!

上記は鎌田先生(東洋大学)の短いコラムの一部ですが後半は、今後予測しがたい将来に向けて社労士個々人が自身のキャリアをデザインしていくことが必要になってきますよ、との(元教え子達を含む)社労士への暖かいメッセージであると受け止めました。
が、少しへそ曲がりの私は日経新聞の土曜日のコラムで若松英輔氏が「言葉のちから」で述べられている「○○プラン△△プランという言葉に仕事人としては違和感を覚えないが一個の人間として接するときは感触が異なる。ままならないのが人生だ・・(5/20版)」の言葉の方にもまた深く共感します。

https://www.nikkei.com/theme/?dw=23020102

政府は 4月27日、男女共同参画会議を開催し、「女性版骨太の方針2023」の策定に向けた検討等について議論した。首相は議論を踏まえ、「女性版骨太の方針2023」の策定に向けた課題として、日本を代表する大手企業(プライム市場上場企業)の女性役員比率を2030年までに30%以上とするための数値目標の設定や行動計画の策定などにより女性登用の加速化を図ること、女性の正規雇用率が20代後半をピークに右肩下がりで低下していく「L字カーブ」の解消に向け、多様で柔軟な働き方の促進等により、非正規雇用の正規化を引き続き進めるとともに、女性のデジタル人材の育成等のリスキリングのための環境を整備すること、などをあげた。

https://www.gender.go.jp/kaigi/danjo_kaigi/siryo/pdf/ka69-s-1.pdf

ポイント!

Mではなく「L字カーブ」とは?と上記資料を読んでみましたところ、女性の正規雇用比率が30代から急激に(かつほぼ直線的に)下降する様子を指すようです。
「女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の強化」が重要なテーマの一つとなっていますので、これを機会に「配偶者控除制度」の是非についての検討がより進むことを期待します。
少し古いですが、下記は2016年日本経済新聞電子版の記事です。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO08537550Z11C16A0TY5000/

厚生労働省はいわゆるシフト制の円滑な運用に向けた取組み事例を公表した。シフトの通知について、事業所への張出しだけでなく、スマートフォンアプリやSNS、メールで共有する方法を勧めている。
 いわゆるシフト制は、労働契約締結時点で確定的に労働日や労働時間を定めず、一定期間ごとに作成する勤務割やシフト表によって初めて具体的な労働日・時間を決定する形態。労使ともに柔軟にシフトを組めるメリットがある一方、…

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001079683.pdf

ポイント!

コロナ禍においてシフト制で働く労働者の労働時間が激減するなどのトラブルが多く発生したこともあり、厚生労働省は2022年1月に、使用者がシフト制で勤務する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項を公表しています。
上記リーフレットは昨年度の留意事項を踏まえた上で、シフト制で労務管理されている使用者に対しさらなる注意や取り組みを促すものです。

<昨年度のリーフレット>
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000870906.pdf

厚生労働省は30日、有期契約労働者等に対する労働条件明示の改正ルール(2024年4月施行)に関するリーフレットを公表した。有期労働契約については、契約締結と契約更新ごとに更新上限の有無等を明示すること、更新回数の上限を2回目以降の契約の際に新設する場合や、最初の契約締結時に設けていた更新上限を短縮する場合には、事前にその理由を説明すること、無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに申し込み権があることや、無期転換後の労働条件を明示することを義務付けている。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080267.pdf

ポイント!

厚労省のHPで関連の通達を確認しますと、「令和4年度労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえた労働契約法制の見直しについて」との大見出しがありましたのでそちらも目を通してみました。内容はほぼ同じでしたが分科会の報告書の方が分かり易かったです。
通達によると、上記に加えて2024年4月には裁量労働制を導入されている企業へ新たに制度の見直しと改善が求められることになるようです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080722.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001031112.pdf

外国人労働力のあり方を議論する政府の有識者会議は10日、技能実習制度の廃止を求める提言の試案をまとめた。政府は代わりに労働力確保と人材育成を両立させる新制度の創設を検討する。現在は原則認めていない転職を一定程度認める仕組みにする。
少子高齢化による深刻な人手不足で技能実習生が事実上、労働力の担い手となっている実態に合わせる。途上国へ技術移転する国際貢献と位置づけて・・・

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70079000R10C23A4MM8000/

ポイント!

技能実習生に対する人権侵害や賃金未払いなどの事件が多く報道され、「国際貢献」とはかけ離れた制度であるとの認識はある程度広まっていたと思います。しかしながら、特に中小企業の労働力確保の必要性から本制度はこのままずるずる生き残るのかと感じていたところ、有識者会議で技能実習制度の廃止を求める提言が出され政府も新制度の検討に入るとのことです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/index.html

厚生労働省は、賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への賃金支払い)について、業者向けのガイドライン、指定申請書や労働者同意書等の様式、よくある質問と回答、労使向けのリーフレットを公表している。賃金の通貨払い原則の例外として、銀行口座等への振り込みに加え、労使協定の締結と労働者の個別同意を条件として厚生労働大臣が指定する資金移動業者の口座への支払いが4月1日から可能になる。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html

ポイント!

「給与のデジタル払い」「資金移動業者」「ペイロールカード」など耳慣れない言葉が多く出てくるので今まで敬遠しておりましたが、デジタル払い解禁が間近に迫っているとのことで慌てて少し勉強しました。
メリットは給与払いのデジタル化を解禁することが国全体のデジタル化を促すことに繋がり利用者の利便性が増すとのことです。反対に問題点として資金移動業者の経営破綻時の保全策やデジタル化ゆえのセキュリティー面での不安が残るとのことですが、デジタル化で世界から遅れを取る日本としてはどうしても進めていかなければならない宿題のようです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK085NR0Y1A200C2000000/

企業におけるキャリアコンサルティングの活用状況に関する調査を実施しました。
その結果、企業の従業員に対する能力開発の意欲は高い一方で、キャリアコンサルティング、ジョブ・カード、セルフ・キャリアドック等の各種キャリア形成支援施策の導入率は低く、一定のギャップがみられました。従業員数が多いほど支援施策の導入率は高かったこと、45歳以上比率が低いほど、また新卒正社員採用数が直近3年間で増えているほど各種キャリア形成支援施策の導入率は高かったこと、などが分かりました。

https://www.jil.go.jp/institute/reports/2023/0223.html?mm=1848

ポイント!

キャリア相談の仕組みの無い企業の特徴として①販売やサービスの業種、②従業員数が少ない、③創業年が古い などが挙げられています。またこれらの企業がキャリア相談を行わない理由を「労働者からの希望がない」としている点について、JIPTは労働者の相談希望やニーズが企業内のキャリア相談で解決する内容のものではない可能性があると指摘されているところが気になりまして関連の研究成果を読んでみたところ下記の調査報告に辿り着きました。

https://www.jil.go.jp/institute/reports/2017/0191.html